りんごの老化とスマートフレッシュ™【1-MCP】処理について         

  • 不老不死?の科学 「りんごは日持ちのする果物」という認識が割りと浸透しているかと思いますが、品種によってそれは千差万別です。国内を流通する量の約半分を占める主力品種「ふじ」の店頭販売期間が長いため、そのような印象が根付いてきたのかもしれませんが、「ふじ」とはいえ、収穫時期による熟期の違いや有袋栽培・無袋栽培(ここでの説明は省略します)でその程度には違いが出てきます。

     りんごは貯蔵期間が長くなると酸度が低下し、果肉の硬度も低下、果実自体の呼吸により糖質も使われるため糖度も低下、水分も抜けてしなしなとなり、やがては腐敗していきます。

     貯蔵性低下の要因はりんご自体が放出する老化物質「エチレン」ガスという植物ホルモンによるところで、エチレンが果実に存在するエチレン受容体と結合することで老化が進んでいきます。また、りんごのいい香りはこのエチレンの香りとも言えます。もちろん色はなく目には見えません。
  •  このエチレンがエチレン受容体と結合する前に先に結合して‘邪魔’するのが1-MCP(読み:イチエムシーピー、商品名:スマートフレッシュ)という人工的に生成された植物調整剤(ガス状物質)です。ちょうど人の病気の原因となるウイルスとワクチンの関係に似ています。収穫直後、密閉された空間でこのガス処理をすることで、理論上は格段に貯蔵性が上がることになりますが、品種によって効果に差異があり、収穫時点での熟度によっても効果の発現が弱いものもあります。1本の樹で同じ日に収穫されたとしても、果実1個1個の熟度はバラバラですので、うまい具合にスマートフレッシュ処理をしたとしても100%効果があるわけでもなさそうです。また、りんごの細胞自体は生きていますので、「老化のスピードを抑える」と言ったほうが正確です。保管次第では水分も抜けます。
  •  当社においても2022年度から一部の品種で処理をしてみて、‘’いい使い方‘’を模索しておりますが、まだまだ分からないところが多いです。ただ、「美味しさが長持ちする」のであれば積極的に利用していきたいと考えておりますので、購入される方々にもりんごの貯蔵性について知識を深めるきっかけになってくだされば幸いです。