生産のコダワリ
-
フェロモン防除と減農薬栽培
フェロモン剤(写真:コンフューザーR[信越化学社製])を利用することにより殺虫剤の使用数削減はもちろん、天候や病気の発生状況の観察で殺菌剤も削減するように努めています。2002年から2号園の約100アールから始め、現在は急傾斜地である3号園以外では全て設置しています。
比較的冷涼地帯ということもあり、青森県の防除暦はもともと使用薬剤数は少なめに設定されておりますが、近年の温暖化による害虫の生態の変化と病原菌の耐性菌発生による全県を挙げての蔓延防止が必要となってきました。殺虫剤に関しては、基準の半分以下の使用数になるように散布設計しています。もちろん単なる減農薬が目的ではなく、一大産地を守る上で、農薬の使用が全くの悪者であるとは感じておりません。病害虫が蔓延するのを防ぎ、継続的に商品価値の高い生産物を産み出すことが最大の目的でありつつ、「無駄な薬剤を削減する」「ある程度の病害虫被害を許容する」「生態系のバランスの取れた’生きている’園地作り」目指して取り組んでおります。
マイナーな害虫には極力目を瞑っておりますので、従業員の方々には少しだけ我慢してもらっております。ただ、スズメバチ、アシナガバチが樹冠の中に巣作りしやすいのが玉に瑕です。専用の殺虫スプレーが欠かせません。 -
葉とらず栽培→「はあとりんご」
単なる「葉を取らない」栽培ではなく、敢えて「葉を取らずに」、食味重視の果実の供給をすることは究極の栽培技術の集約と言えます。全ての園地、全ての品種で実施しているわけではありませんが、自身の技術の向上の為にも面積、品種共に導入を拡大していく予定です。
「ふじ」で実施する際は葉っぱの機能を最大限に使い尽くし、完熟させてからの収穫となります。
早生種や中生種の赤色品種で実施する際は、なかなか黄変落葉を待ってというわけにはいかず収穫のタイミングは難しくなりますが、葉を取らなくとも果実に光が当たるように管理しつつ、食味が十二分に乗ったのを確認してからの収穫となります。
そして、2023年からAT farmの葉とらずりんごは【はあとりんご】と称します!詳細は関連ページをご参照ください。クリックでジャンプ) - 剪定枝の土壌還元 2009年からチッパー(丸山社製)を導入し、従来は焼却処分していた剪定枝をチップ化して土壌に還元する取り組みを始めました。当初は6号園80アール程度からでしたが、2018年には冬期間の雇用を強化したことで作付面積の100パーセントにおいて、粉砕・土壌還元することにを達成しております。かなり太い枝も粉砕可能な機種を使用していますが、冬場の暖房燃料の確保もあり、10センチ径程度以上のものは分別されております。
- 灌水装置 水田転換園の強みは、山手の園地では難しい「水利の良さ」と言えます。ただ、園地全体に効率よく灌水するのはよほど条件がそろっていないと難しいでしょう。理想的なのは自然の落差(勾配)を利用して地中に埋めた送水管に用水を送り込み、樹列に沿って樹冠下に水を噴射または点滴する灌水方法です。過剰にぬかるませたり、乗用モーアやSSなどの機械作業の邪魔をしないように常時設置しておけるように全ての水田転換園で実施するのはまだまだ先のようですが、干ばつ時は試行錯誤しながら灌水しております。
- パルメット仕立て 矮性台を利用して、列方向にできる限り平面に近い形に枝を配置して仕立てます。作業時の脚立の掛け方も容易で、作業性はすこぶる良好となります。剪定による樹形の維持も比較的容易です。植栽距離は3×3mの111本植えで反収を上げるように試験しましたが、列間に運搬用の機械が入った時の余裕も考えると、列幅4mは必要だと思います。樹間は3m以上が理想ですが、品種によっては2.5mでも維持が可能です。
- 地域資源活用 青森県の地場産業のひとつであるホタテ養殖産業の廃棄物「ホタテの貝殻」。これを園地の排水不良箇所の地下部に暗渠パイプを纏うように埋めていきます。いわゆる暗渠疎水材と言われるものですが、かつては砕石や川砂利、もみ殻、廃木材などが使用されてきましたが、その効果や扱い易さを考えても、このホタテの貝殻が最も有効と考えております。
-
斜立仕立て
矮性台を利用して、4×2mで栽植したのち、1本の樹に交互に反対方向に斜立させた。当初の屈曲位置は樹高0.8~1mからとし、3~4年生の樹齢で傾けるのがいいタイミングのようです。余り早く傾けすぎると、ひたすら頂端や背面側から枝が上に向かって強く伸びようとするので、ある程度バランスよく枝が発出してからがいいかと思います。角度は当初は45度にしましたが、樹や果実の重みで棚が下方向に下がってくるため、なかなか角度を維持するのは難しいです。
収穫作業は非常に効率がいいのですが、作業空間が意外と狭く、大人数での作業は必ずしも効率的とは言い難いです。開園コストが高いのも難です。